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- Vol.2 リレーションシップ
- ――確固たる自分軸がハワイでつくられていったんですね。その自分軸の「土台」となっているものは何なのでしょうか。
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家族や先生の存在ですね。特に、母をはじめとする家族の影響は大きく、脈々と受け継いできたものがあります。
わたしは「人の役に立つ」ということを大切にしているのですが、これは母の影響です。
母は専業主婦で、子どものため、夫のため、自分や夫の両親のためと、もうそこまでしなくても良いのにと思うくらい貢献心の塊で(笑)。病気をしても、まだ人の世話を焼くというか。人のために何かしているのが喜びなんですよね。その姿を見てきたので、すごく影響を受けていると思います。
ただ、わたしにとって、「人の役に立つ」の"人"というのは、より多くの人ではあるけれど、自分がちゃんと出会えるくらいの"人"なんです。世界中のすべての人たちが、という壮大な感じではなくて、実際に手が届き、手を差し伸べられる人たちに、どっぷりgive 、give 、give したい(笑)。
といいながら、大々的に「人の役に立ちます!」というところには、あまり喜びを感じなくて。あまり人の見えないところだけれども、自分の中の美徳として、「見えないところでも、役に立てている自分が誇らしい」「大きなことじゃなくても、そういうことができている自分が誇らしい」と思うんです。
- ―― give 、give 、giveしたいっていうのがいいですね!他にもご家族から影響を受けたものはありますか?
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父方の血筋から学んだことは、視点を広く持つこと、自分で道を切り開いていくことです。実は、父方の祖父はアメリカ生まれなんです。明治時代に、曽祖父がカリフォルニアに開拓民として行って、農業をやっていたようで。祖父は高校まではアメリカの学校に通っていたので、英語がペラペラなんです。そのため、わたしがハワイへ行く時には、テープレコーダーに、英語のボキャブラリーを発音して録音してくれました。血筋を考えると、オリジンとして、「海外でパイオニアとして開拓する」というようなところがあるんだな、と思います。
自分で道を切り開くということで言えば、実は、小・中学校の時にいじめられたことがあったのですが、全然めげませんでした。日本の小学校にいた時には学級委員をやっていたので、優等生に見えたのが気に入らなかったのか、男子に椅子や机を隠されたことがありました。それから、女の子特有の"グループで行動する"っていうのがすごく苦手で、どのグループにも所属しなかったんです。そしたら、上履きを隠されたり、無視されたりしたこともありました。
そんな時でも、母には何があったか話していたんです。母からは「自分が正しいと思うことをしなさい」「自分がどう思っているかを、ちゃんと相手に伝えなさい」って言われました。絶対に自分を見捨てないで、常にサポートしてくれる存在があるというのは心強かったですね。だからこそ、強くなれたというのもあります。
- ――お母様の存在は大きいですね。ハワイでも似たようなことがあったのですか?
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はい。ハワイでは、英語が話せないことで、いじめられたことがありました。 現地の小学校で、子どもたちと何とかコミュニケーションしようと思って、日本からおはじきとか折り紙を持っていったんです。最初は物珍しいからみんな寄ってきたのですが、言葉が通じないとわかると、無視されたり、何を話しかけても「知らない」って言われたり。
中学や高校でも、白人の子から「肌の色が違う」とか「イエロージャップ」とか言われて、無視されて。すごく孤立していきました。
中学校の時に支えてくれたのは、担任の先生でした。見た目は、ブルドッグみたいな先生で(笑)。本当に怖くて、ぶっきらぼうで、いつもしかめ面をしている感じでしたが、根底にはすごく愛情のある先生だったんです。
その先生が「サチエ。何か趣味はやっていないの?」「楽器は?」「スポーツは?」と聞いてくれて。小さい頃からピアノをやっていることを伝えると、「バンド(吹奏楽)に入ったらどう?」と勧めてくれました。実際、バンドに入ってみたらすごく楽しくて。音楽を通じて、友達ができるようになったんです。
現地の子たちと触れ合うようになると、だんだん英語も上達していきました。当初は、英語が第二外国語の生徒が集まるSlepというクラスにいたのですが、現地の子たちが受けているRegularクラスへ行くには、テストを受ける必要があって。すると、担任の先生がいち早く「サチエ。これ、トライしても良いんじゃない?」と勧めてくれました。1回目は落ちましたが、2回目ぐらいで通ったんです。
これは先生が「がんばれ、がんばれ」って言ってくれたり、「これをやっておいた方が良いよ」とワークシートをくれたりと、英語が上達するような仕掛けや、わたしがステップアップできる道をつくってくれたことが大きかったと思います。
と同時に、わたしの中には「反骨精神」というか、逆境であればあるほど燃えてくるところがあって(笑)。
「何くそっ!」というところから這い上がっていく力が、英語を上達させ、いじめを乗り越える力にもなりました。「いつか見てろよ〜」という気持ちがすごくあったので、週2〜3回は家庭教師をつけて、宿題をバッチリやって。
テスト前になると、もう徹夜しながら勉強して。学校でわからない単語があったら全部メモして、家に帰ってから辞書で調べていました。中・高校時代のように、あんなに勉強したことはなかったですね。でも、言葉の意味がわかるとすごく楽しくて。初めはマイナスのエネルギーから勉強を始めたのですが、いつのまにか、自分が設定した小さな目標を一つひとつクリアしていく、自分を高めていくことに喜びを感じるようになりました。
やりきった感がある時って、やっぱり評価とか成果もついてくるんですよね。努力したら報われるというのが実感値としてありました。こうして振り返ってみると、先生からの一言やいじめという体験が、「自分と対話」するきっかけをくれたように思います。それによって、自分の軸がしっかりしてきたというか、自分はどういう人間なのか、自分のアイデンティティがはっきりしてきたような気がします。
- ――しっかりした「自分軸」、そして、そばで見守ってくれる人の存在があると、自己肯定感が高まりそうですよね。
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そうですね。ハワイでは、"self-esteem"という言葉を使っていたので、「自己肯定感」というよりも、そちらの方がしっくりきますが。要は、自分で自分を認めることですよね。最終的には、他の人からの評価ではなくて、自分自身がどれだけ自分の人生に誇りを持って生きられるかに尽きると思います。
ハワイでは、よく先生が「High self-esteemを持ちなさい」と、何かにつけて言っていました。self-esteemが高いと、何が起こってもメンタル面でタフなんですよね。他の人とも比較をしなくなるし。
ある時、母に「わたしのしつけってどういう風にしていたの?」と聞いたら、「人と比べない」、そして「独立独歩」ということを言っていました。わたしはself-esteemが高いのですが、「ああ、だから今のわたしがあるんだ」と納得しました(笑)。
- フリーライター。神奈川県生まれ、横浜在住。
介護、子育て、医療、食など、くらしに役立つ情報を、新聞・雑誌・WEBなどに執筆している。
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